建設業界は、住宅やビル、道路、橋など、さまざまな社会インフラの建設に携わる業界です。日本の産業のなかでも大きな市場規模を誇り、今後も安定した需要が期待されています。
一方で、人手不足や技術者の高齢化といった課題も抱えているため、建設業界を志望する場合は把握しておくことが大切です。
この記事では、建設業界の役割や職種、課題に加え、働くメリットや向いている人の特徴などを詳しく解説します。
この記事でわかること
- 建設業界のおもな役割としては、社会インフラの整備や防災対応、災害復旧などがある
- 建設業界は仕事の成果が形として長く残る魅力であり、やりがいを感じやすい
- 建設業界の職種や仕事内容は多岐にわたり、文系出身者が活躍できる分野もある
建設業界とは?【基本情報と役割】
建設業界とは、建物や道路、橋、トンネル、ダムなど、社会インフラや建築物をつくる業界です。ものづくりのなかでも規模が大きく、人々の生活を支える基盤を形づくる業界といえます。
建設業界は、「土木分野」と「建築分野」の2つの分野に分けられます。

分野ごとに事業の規模や対象は異なりますが、いずれも元請企業や下請企業、設計事務所など、複数の立場の企業が協力してプロジェクトを進めていく点は共通しています。
各企業のおもな役割
元請企業:発注者から直接仕事を受け、プロジェクトの管理や施工を統括する企業
下請企業:施工作業の一部を請け負う企業
設計事務所:設計や計画、施工管理などを担当する企業
建設業界の役割
建設業界は、社会インフラの整備や防災対応、災害復旧など、重要な役割を担っています。
| おもな役割 | 詳細 |
|---|---|
| インフラ整備 | 道路や鉄道、水道・下水道といった生活基盤の構築 |
| 防災対応 | 地震・台風・洪水などに備えた耐震建築・堤防整備 |
| 災害復旧 | 地震や豪雨による被害の修復や復旧工事 |
| 街づくり | 都市開発・再開発・スマートシティ化に向けた支援 |
ただ建物をつくるだけでなく、人々の暮らしや安全、地域社会の発展や災害対応を支える重要な役割を持つ業界といえます。
建設業界の市場規模
建設業界は、日本の産業のなかでも大きな市場規模を誇る業界です。国土交通省が提供している統計データ「建設投資見通し(2024年度)」によると、2024年度の建設投資額は前年度比2.7%の73兆200億円とされています。内訳は次のとおりです。
建設投資額の内訳
公共投資(26兆2,100億円):国や自治体が行う道路・橋・学校などの整備
民間投資(46兆8,100億円):住宅、商業施設、オフィスビルなど民間企業による建設
近年は、老朽化したインフラの修繕や防災・減災を目的とした取り組みが増えており、公共投資は安定した動きを見せています。さらに、都市部の再開発や物流施設の建設、再生可能エネルギーに関するプロジェクトも活発に進められており、今後の展開が期待される業界です。
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建設業界のおもな職種と仕事内容
建設業界のおもな職種は次のとおりです。
具体的な仕事内容を見ていきましょう。
施工管理(現場監督)
施工管理は、現場の工程・安全・品質・原価を管理する仕事です。実際に作業を行う職人の方々をまとめながら、工事を予定通り、安全性と品質を確保して進めていきます。
現場での勤務が中心となり、チームでの連携やリーダーシップが必要な場面もあります。コミュニケーション能力や調整力が重要になるため、文系のスキルを活かせる職種です。
設計(意匠設計・構造設計・設備設計)
設計は、建物の外観や構造、内装、設備などを図面に落とし込む仕事です。建築主(施主)の要望をもとに、建築基準法などの法律をふまえて設計プランを作成していきます。
設計には次の3つの分野があります。
| 意匠設計 | ・建物の外観や内装、間取りなどを考案する仕事 ・建築主の意見を取り入れながらデザインやプラン作成を行う |
| 構造設計 | ・建物が地震や台風などに耐えられるよう、安全性を検証する仕事 ・構造計算や強度を改善するための改善提案などを行う |
| 設備設計 | ・建物内の電気、空調、音響、配管などを設計する仕事 ・予算に応じた提案や調整を行う |

これらの設計業務に携わるには、建築士などの資格が必要となる場合があります。
技術開発・研究
技術開発・研究は、新しい建築資材や施工技術、安全性の向上、省エネ設計などに取り組む仕事です。近年では、BIMや3Dスキャン、AIといった先端技術を活用する企業も増えています。
BIMとは
- Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の略称
- 建築物の設計や施工、管理を行う際に使われる3Dモデルと情報を組み合わせたデジタル技術
また、脱炭素、防災、労働力不足といった社会課題に対応する技術にも注目が集まっており、特に大手企業では研究部門が設けられていることもあります。

開発などの専門的な知識やスキルが求められるため、理系出身者が活躍しやすい職種です。
営業(法人営業)
建築業界の営業職は、民間企業、自治体、不動産関連企業などの顧客に対して、建設工事の提案や契約に関するやりとりを担う仕事です。見積の作成、契約交渉、入札対応などを担当することもあります。提案力や信頼関係を築く力が重要になるため、文系出身者も活躍できる職種です。
事務・総務・経理(バックオフィス)
事務・総務・経理は、企業全体の運営を支える仕事です。担当する業務は、契約書類の作成から、経理業務、労務、庶務など多岐にわたります。
建設業界の場合は、建設業法や労働安全衛生法など、建設業界に特有の法律に関連する事務もあります。社内外の人と連携しながら正確に業務を進めることが大切です。
本社や支店での勤務が中心ですが、建設現場で事務作業を行う「現場事務」として働く仕事もあります。
建設業界が抱えている課題
建設業界において、現状どんな動きがあり、どんな課題があるかも確認しておきましょう。
人手不足と高齢化
日本全体で労働力人口の減少が進むなか、建設業界でも労働者の確保が難しくなっています。若年層の入職者が少ない一方で、ベテラン技能者の高齢化が進んでいるため、技術の継承や将来の担い手の確保が課題となっています。
働き方改革と長時間労働の是正
2024年4月から、建設業にも罰則付きの時間外労働の上限規制が導入されました。この規制により、業界全体で労働環境を改善する取り組みが求められています。慢性的な長時間労働を解消するためには、現場ごとの具体的な対策が必要です。
インフラの老朽化と維持管理
高度成長期以降に整備された道路や橋、トンネル、下水道などのインフラ施設は、建設後50年以上が経過しているものが増えています。2040年には道路橋のおよそ6割が築50年を超えると予測されており、安全性を保つための補修や更新が急務です。これに対応するため、戦略的な維持管理計画や新しい技術の導入が必要とされています。
生産性向上と技術革新の推進
建設業界では、全産業平均に比べて労働生産性が低い状態が続いています。そのため、人手不足を補う効率化が求められています。しかしながら、現場では依然として紙や口頭による作業が残り、デジタル技術の活用が進んでいない状況です。
国土交通省は「i-Construction 2.0」を策定し、2040年度までに建設現場の省人化(生産性向上)を少なくとも3割進めることを目指しています。この取り組みによって、施工プロセスの自動化やデータ連携の強化など、新しい技術による生産性向上が期待されています。
建設業界で働くメリット・やりがい
建設業界で働くことで得られるメリット・やりがいは次のとおりです。
自分の仕事が形に残る
建設業界は、仕事の成果が形として長く残ることが大きな魅力です。ビルや住宅、道路、橋など、自分が携わった構造物が、何十年にもわたって人々の暮らしを支えていきます。

「この建物の建築に関わったんだ」と家族や友人に話せることは、達成感や自信につなるでしょう。
スケールの大きなプロジェクトに関われる
数億円、あるいは数十億円規模のスケールの大きなプロジェクトに参加できる点も、建設業界ならではの魅力です。1人では成しえないプロジェクトをチームでやり遂げる経験は、自分自身の成長にもつながります。
また、現場ではさまざまな職種の人たちと関わります。企業や職種の垣根を越えて協力し合い、完成した瞬間にはチーム全体で達成感を共有できるでしょう。
社会インフラを支える誇り
道路や鉄道、学校、病院といった公共施設の整備に携わる建設業は、人々の暮らしを支える大切な役割を担っています。特に、災害復旧や老朽化インフラの修繕といった仕事では、地域の安全や安心を守っているという実感が得られやすく、やりがいにもつながるでしょう。
専門性を磨いてキャリアアップできる
建設業界では、資格や実務経験によってキャリアを段階的に高めていくことができます。施工管理技士や建築士などの国家資格を取得すれば、専門的な知識とスキルを活かして長く活躍することが可能です。
実力が評価されやすい業界であり、将来を見据えてスキルを身につけたい人にとって、魅力のある環境といえるでしょう。
建設業界が向いている人の特徴
次のような特徴を持つ人は、建設業界に向いている可能性があります。
チームで仕事を進めるのが好き
建設業界の現場は、設計担当、施工管理、職人、行政関係者、依頼主など、さまざまな立場の人と連携しながらプロジェクトを進めていきます。そのため、協調性や信頼関係を築く力が欠かせません。
部活動や課題制作などでチームをまとめた経験がある人、仲間と協力しながら目標を達成することにやりがいを感じる人は、やりがいを持って取り組めるでしょう。
最後まで責任を持ってやり遂げられる
建設のプロジェクトは、半年〜数年単位で進行する長期的な計画が多いです。途中でトラブルが起きたり、予定通りに進まなかったりしても、粘り強く最後までやり遂げる力が求められます。
そのため、小さなことでも地道に取り組み、最後まで責任を持ってやり遂げた経験がある人は向いている可能性があります。
ものづくり・形に残る仕事が好き
建築や街づくりに興味がある人はもちろん、DIYや模型づくり、図面を描くことが好きな人にとっても、やりがいを感じやすい環境です。
建設業の魅力は、自分の関わった成果が「形」として残ることです。地図に残る建物、地域のランドマークになるような構造物など、自分の仕事が未来に残っていく感覚を味わえるのは、この業界ならではといえるでしょう。
建設業界の志望動機例文
建設業界の志望動機は、業界全体への関心・志望理由を明確にしつつ、企業ごとの強みや特徴を踏まえて「なぜその企業を志望するか」を明確に伝えることが大切です。
ここでは、建設業界の営業職と設計を志望する際の、志望動機の例文を紹介します。
営業職を志望する場合
例文
多くの人と関わりながら、建設プロジェクトを前に進める役割に魅力を感じ、御社の営業職を志望しました。
学生時代に地域イベントの運営を担当した際、関係性を築きながら企画を形にしていく面白さを強く感じました。この経験から、「人と接しながらものづくりを支える仕事がしたい」と考えるようになり、建設業界に関心を持ちました。
御社は民間の商業施設や複合ビルの建設も手がけており、特に〇〇プロジェクトでは、企業ニーズにあわせた柔軟な提案を重視している点にひかれました。営業と技術部門が一体となって進める体制にも共感しています。
今後は、学生時代に培った調整力や傾聴の姿勢を活かして、関係者との信頼関係を丁寧に築きながら仕事を進められる営業職を目指します。
ポイント
- これまでの経験をもとに、営業職への関心が生まれた背景を具体的に伝えている
- 企業のプロジェクト事例や営業スタイルに触れ、「なぜその企業で働きたいのか」を明確に伝えている
- 自分の強みをどう活かしたいかが明確で、入社後の成長をイメージしやすい
設計を志望する場合
具体例
多くの人が利用する空間に、安心感や使いやすさを設計という形で届けたいと考え、御社の設計職を志望しました。
大学では都市建築を学び、演習で取り組んだ公共施設の設計課題を通して、空間の配置や動線が人の行動や気持ちに影響を与えることを実感しました。建物の使いやすさだけでなく、利用する人の気持ちにも寄り添う設計の重要性を感じたことが、設計職をめざすきっかけです。
御社は地域の公共施設や教育施設の設計を数多く手がけており、なかでも〇〇市の図書館プロジェクトでは、地域の声を丁寧に反映させた設計が話題となっていた点にひかれました。人と地域に長く関わっていく建築に携わりたいと感じ、志望しています。
これまでの学びや課題制作で磨いた図面作成やプレゼンテーションのスキルを活かし、利用者目線を大切にした設計提案ができるよう努力したいと考えています。
ポイント
- 公共施設の設計演習という具体的な学びが、設計職への関心につながっている
- 企業のプロジェクト事例に触れ、志望理由に具体性と共感がある
- 自分の強みや学んできたことを入社後にどう活かしたいかが明確

志望動機の作成方法やポイントはこちらの記事で詳しく解説しています。
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よくある質問
建設業界とはどんな業界ですか?
建設業界は、住宅・ビル・道路・橋・トンネルなどをつくることで、人々の暮らしを支えている業界です。設計や施工、管理、営業など多様な職種が関わり、インフラ整備や街づくりなど、社会貢献度の高い仕事を担います。
建設業界は人手不足ですか?
建設業界では若手労働者の不足が深刻になっています。高齢の技術者が多いため、今後の世代交代に向けた若手育成が課題です。
建設業界の市場規模はどれくらいですか?
2024年度の建設投資額は73兆200億円とされ、日本のなかでも大きな産業のひとつです。住宅やビルなどの民間投資に加えて、道路や橋などの公共投資も安定しており、規模・雇用ともに大きな業界といえます。
建設業界の今後はどうなりますか?
建設業界では、老朽化したインフラの更新や災害対策、都市再開発といった取り組みが進むため、今後も安定した需要が見込まれます。また、ICTやAIを活用したDXの進展により、働き方や生産性向上などの変化も期待されています。