業界・企業研究

食品業界とは?市場規模や動向、働くメリットや向いている人の特徴を解説

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食品業界は、私たちの生活に欠かせない「食品」に関わる業界です。安定した需要と成長性があり、多様なキャリアを築きやすいなどのメリットがあります。

就活で食品業界を志望する場合は、業界の特徴やトレンド、課題についても知っておくことが大切です。

この記事では、食品業界の概要や働くメリット、トレンドと課題、向いている人の特徴など、業界研究に役立つ内容を紹介します。

この記事でわかること

  • 食品業界の市場規模は近年増加傾向にある
  • 近年は健康志向の高まりや環境への配慮、技術革新が注目されている
  • 食品業界にはさまざまな職種があるため、多様なキャリアを築きやすい

食品業界とは?

食品業界とは、私たちの生活に欠かせない食品を生産・加工・流通・販売する企業が集まる業界です。食品業界には、お菓子や乾燥めん、レトルト・冷凍食品、大豆製品、乳製品、清涼飲料水、アルコール類、調味料、小麦粉など、多種多様な食品を扱う企業が含まれます。

食品業界の市場規模

農林水産省の資料「食品産業をめぐる情勢」によると、2021年の農業・食料関連産業の国内生産額は108.5兆円にのぼり、日本の経済全体の約11%を占めています。この数字から、食品業界が日本の経済において重要な位置を占めていることがわかります。

また、「矢野経済研究所」の調査では、2023年度の加工食品の市場規模は前年度比102.7%の31兆1,416億円(メーカー出荷金額ベース)となりました。これは、物価の高騰による価格改定が市場規模の増加に影響していると考えられます。

食品業界の供給の流れ

食品が消費者のもとへ届くまでには、いくつもの工程を経ています。この流れをサプライチェーンといい、それぞれの段階で専門の企業が関わっています。

ここでは、食品業界における一般的な供給の流れを紹介します。

食品業界の供給の流れ

このように「生産」「加工」「流通」「販売」の4つの段階を経て、消費者のもとに届きます

まず、農業や漁業などの分野で食品の原材料が生産されます。次は、食品メーカーがこれらの原材料を加工し、製品化する段階です。例えば、小麦からパンやパスタを作ったり、乳を加工してチーズやヨーグルトを生産したりする工程が含まれます。

こうして作られた食品は、商社や卸売業者を通じて、小売店や飲食店などに供給されます。そして、スーパーやコンビニの店頭に並んだり、レストランで提供されたりすることで、消費者のもとへ届く流れです。

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食品業界の最近のニュース・トレンド

食品業界は、消費者の嗜好やライフスタイルの変化に敏感で、近年は健康志向の高まりや環境への配慮、技術革新などがトレンドとして注目されています。例えば、健康を意識する人が増えたことで、低糖質や高たんぱくの商品が多く展開されるようになりました。

また、環境問題への関心から、サステナブルな原材料の活用やフードロス削減への取り組みが進んでいます。さらに、AIやIoTを活用した生産効率の向上や新商品の開発も進行中です。

食品業界の課題

食品業界が直面している課題の一部としては、次の3つがあげられます。

物価高によるコスト高騰

近年、異常気象や国際的な紛争の影響で農作物の不作や流通の停滞が発生し、原材料の価格が上昇しています。その結果、食品の製造コストが増え、企業の収益にも影響を及ぼしている状況です。さらに、ガソリン価格の高騰やドライバー不足により輸送費も上昇しています。

労働人口の減少や最低賃金の引き上げにより、人件費の負担が増加していることも課題です。こうしたコスト上昇が企業の経営を圧迫し、利益率の低下につながることが懸念されています。

労働力不足

少子高齢化や労働環境の厳しさから、食品業界では人手不足が深刻化しています。特に、生産現場や物流部門では労働力の確保が大きな課題です。

食品安全や品質管理、新製品開発など、専門的な知識や技術を要する分野では、人材の育成も課題となっています。

消費者ニーズの多様化への対応

健康志向の高まりやライフスタイルの変化に伴い、消費者のニーズはさらに多様化しています。このようなニーズの変化に対応するためには、新商品の開発やマーケティング戦略の柔軟な見直しが必要です

また、近年ではアレルギー対応食品やベジタリアン向け商品の需要が高まり、選択肢を広げることが求められています。しかし、これらの商品を提供するには、専用の生産ラインの確保や成分表示の厳格化が必要となり、コストや手間の負担が大きい点が課題とされています。

食品業界の仕事内容

ここでは、食品業界の仕事内容を紹介します。

研究開発・生産技術

研究開発職は、新商品の開発や既存商品の改良を担当します。消費者のニーズや市場動向を分析し、製品の味や品質、安全性を向上させるための研究を行う仕事です。

また、製造プロセスの効率化や新技術の導入も重要な役割のひとつです。特に、生産技術職では、大量生産を実現するための技術開発や生産ラインの設計を担います。製造工程の改善や設備導入を進めることで、生産効率の向上とコスト削減を目指しています。

生産管理・品質管理

生産管理職は、生産計画の立案や進捗管理を担当します。原材料の調達から製品の出荷までの工程を統括し、納期や生産コストを管理することがおもな役割です。製造現場の人員配置や設備の稼働状況の最適化も行います。

品質管理職は、製品の品質維持と向上を目的に、製造過程や最終製品の検査を行う仕事です。衛生管理や法規制の遵守を徹底し、消費者に安全で高品質な製品を届ける役割を担っています。

商品開発・マーケティング

商品開発職は、市場調査や消費者の声をもとに新商品の企画や既存商品の改良を進める仕事です。製品コンセプトの立案からパッケージデザイン、価格設定、販売戦略まで幅広い業務を担当します。

マーケティング職は、ブランド戦略の策定やプロモーション活動を通じて製品の市場浸透を図る役割を担います。広告や販促キャンペーンの企画・実施、SNSやWebサイトを活用した情報発信など、多様な手段で消費者との接点を生み出す仕事です。

営業・販売促進

営業職は、小売店や外食産業などの取引先に対し、自社製品の提案や販売促進を行います。取引条件の交渉や新商品の紹介、販促活動のサポートを通じて、取引先と長期的な関係を築くことを重視します。

販売促進職は、店頭でのプロモーションやイベントの企画・運営を担当し、製品の魅力を消費者に伝える仕事です。販促ツールの作成やキャンペーンの実施効果の分析も行い、より効果的な施策を検討します。

コーポレート職

コーポレート職は、企業の組織運営や経営を支える職種の総称です。人事、総務、経理・財務などが含まれ、それぞれの分野で企業の成長を支える役割を担っています

人事職は、採用活動や社員の教育、労務管理などを担当します。組織の人材戦略を策定し、社員が能力を最大限に発揮できる環境づくりを推進することがおもな仕事です。

総務職は、社内の設備管理や文書管理、社内イベントの企画・運営など、企業全体の運営をサポートします。法務やリスクマネジメントなど、多岐にわたる業務も担います。

経理・財務職は、企業の資金管理や会計業務、財務戦略の立案などがおもな仕事です。予算の策定や資金調達、投資計画の策定などを通じて、企業の経営基盤を支える重要な役割を果たします。

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食品業界で働くメリット

食品業界で働くメリットとしては、次の3つがあげられます。

安定した需要と成長性がある

食品は生活に欠かせないものであり、常に一定の需要があります。特に近年では、健康志向や環境への配慮が高まるなか、健康食品やオーガニック製品などの市場が拡大しており、新たな商品やサービスが次々と生まれています。

食品業界は景気の影響を受けにくく、不況時でも比較的安定している点も特徴です。食品は生活必需品であるため、ほかの業界と比べて需要が大きく変動しにくい傾向があります。将来的にも需要の安定性が見込まれるため、長期的に働きやすい分野といえるでしょう。

多様なキャリアパスがある

食品業界には、研究開発、生産管理、品質管理、マーケティング、営業など、幅広い職種が存在します。自身の興味やスキルに応じてキャリアを選び、専門性を高めることができる環境です。食品業界での経験を活かして、新しい分野に挑戦する機会も得られるでしょう。

社会貢献ができる

安全で高品質な食品を提供することで、人々の健康や生活の質の向上につながることも、食品業界ならではの魅力といえます。人々の暮らしを支える重要な役割を担う業界で働くことは、やりがいを感じる要素となるでしょう。

さらに、自分が関わった製品が店頭に並び、消費者が手に取る姿を直接見られる機会もあるかもしれません。仕事の成果を実感しやすいため、モチベーションを高める要因となるでしょう。

食品業界が向いている人の特徴

食品業界は、次のような人に向いています。

食への関心が高い人

食材や料理、栄養に対する深い興味や情熱がある人に向いています。食文化に関心があり、新しい味や食のトレンドを探求することが好きな人は、食品業界でやりがいを感じやすいでしょう。

チームワークやコミュニケーション能力がある人

食品業界の多くの業務はチームで進めるため、協力しながら仕事をするのが得意な人に向いています。製品開発や生産ラインの運営など、さまざまな部門との連携が不可欠なため、周囲と円滑にコミュニケーションをとる力が求められます。

細部への注意力がある人

食品の製造や品質管理では、小さな違いが製品の品質や安全性に大きく影響することがあります。細かい作業を丁寧に進めることが得意な人や、慎重に物事を確認できる人は、食品業界で強みを発揮しやすいでしょう。

【新卒】食品業界の志望動機例文

食品業界の志望動機では、「食を通じて何を成し遂げたいか」を明確に伝えることが重要です。食品業界の課題や志望企業の特徴・強みを踏まえた内容とすると、納得感を得やすい志望動機になります。

具体的な例文を見ていきましょう。

製造・開発職を志望する場合

例文

私は、安全で高品質な食品を通じて人々の健康と豊かな食生活を支える貴社の理念に強く共感し、志望いたしました。貴社が長年培ってきた発酵技術を活かした健康食品の開発力、特に機能性表示食品分野でのリーダーシップに大きな魅力を感じています。

大学では食品科学を専攻し、乳酸菌を用いた発酵食品の機能性向上に関する研究に取り組みました。発酵条件の最適化による腸内環境の改善を目的に実験を重ね、データの統計分析を行いました。この経験を通じて、科学的アプローチと創造性の両立が、革新的な食品開発には不可欠だと学びました。

入社後は、これらの経験と知識を活かし、貴社の先進的な発酵技術を用いた健康食品の開発に携わりたいと考えています。

ポイント

  • 企業の理念や強みへの共感を具体的に示している
  • 自身の専門性と企業の技術の関連性を明確にしている
  • 入社後の目標が明確かつ現実的

営業職を志望する場合

例文

私は、食を通じて多くの人の健康や生活を支える仕事がしたいと考え、貴社の営業職を志望しました。貴社は独自の発酵技術を活かした健康食品を強みとし、機能性表示食品の分野でも市場をリードしている点に魅力を感じています。食の安全性や品質を重視しながら、消費者のニーズに応える商品を展開していることに共感し、その価値を広める営業として活躍したいと考えました。

私はアルバイト先の飲食店の仕入れ業務を担当し、食材選定や発注をした経験があります。その際、メーカーの営業担当者とやり取りするなかで、商品の魅力を的確に伝える営業の重要性を実感しました。

入社後は、こうした経験を活かし、取引先の課題を理解しながら、最適な提案ができる営業を目指します。

ポイント

  • 企業の特徴や強みに言及し、志望理由が明確
  • 自身の経験を活かした営業への適性を示している
  • 入社後の目標が明確で、具体的な行動がイメージしやすい
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よくある質問

食品業界とはどんな業界ですか?

食品業界とは、私たちの生活に欠かせない食品を生産・加工・流通・販売する企業が集まる業界です。

食品業界のニュースやトレンドは何ですか?

食品業界で注目されているトレンドには、健康志向の高まり、サステナビリティへの関心、技術革新があります。消費者の健康意識が高まり、低糖質・高たんぱく食品やオーガニック食品の需要が拡大しています。

また、環境への配慮が求められるなか、食品ロス削減やエコパッケージの採用が進んでいます。さらに、AIやIoTを活用した生産効率の向上や、代替肉・培養肉といった新技術の導入も進行中です。


食品業界の年収はどれくらいですか?

食品業界の年収は、企業の規模や職種、経験年数によって異なりますが、業界全体の平均年収は約600万円とされています。

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