業界・企業研究

インフラ業界とは?仕事内容・職種・将来性、就職に向けた対策を解説

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インフラ業界とは、私たちの生活や社会活動を支える基盤となる設備やサービスを提供する業界です。電気・ガス・水道・道路・通信など、日々の暮らしに欠かせない「当たり前」を守る仕事であり、社会への影響力が大きく、高い充実感を得られるのが魅力です。

業界内にはさまざまな職種があり、専門知識を活かせる理系の方はもちろん、文系の方が力を発揮できる環境も広がっています。インフラ業界を志望する方は、おもな分野や職種ごとの仕事内容を理解し、業界全体の構造と働き方についての理解を深めておきましょう。

この記事でわかること

  • インフラとは、社会活動の土台となる設備や仕組みのこと
  • 老朽化するインフラ設備の維持や更新、若手不足などが課題になっている
  • 社会や人の役に立ちたい思いが強い方、地道な努力を続けられる方に向いている

インフラ業界とは?社会を支える基盤産業を知ろう

インフラ業界は、私たちの生活や経済活動を支える社会基盤をつくる大切な産業です。日常生活ではあまり意識しないかもしれませんが、電車での通学やスマートフォンの使用、蛇口から出る水など、どれもインフラの恩恵を受けています。

インフラ業界の定義と役割

「インフラ」とは「インフラストラクチャー(infrastructure)」の略で、社会活動の土台となる設備や仕組みを指します。

インフラ業界は、社会や生活の基盤を支える設備やサービスを提供する業界です。電気・ガス・水道などのライフラインの提供から、道路・鉄道・空港などの交通基盤の整備、さらに通信やITインフラの構築や運用まで、多岐にわたる社会基盤を整備・維持する役割を担っています。

災害時や非常時にもこれらのインフラの安定的な供給・復旧が求められるため、公共性が高く、責任感が必要な業界です。

インフラ業界のおもな分野

インフラ業界の分野

インフラ業界は、さまざまな分野で成り立っています。

インフラ業界のおもな分野

【エネルギーインフラ】
電力、ガス、石油、再生可能エネルギーなど
生活や産業に必要なエネルギー供給を担う分野

【交通インフラ】
道路、鉄道、港湾、空港など
人やモノの移動を支える分野

【通信インフラ】
インターネット回線、固定電話網・モバイルネットワーク、データセンターなどの
整備・保守を含み、情報流通の基盤を支える分野

【生活インフラ(上下水道・廃棄物処理)】
上下水道、廃棄物処理・リサイクルなど
人々の衛生的かつ安全な生活環境を確保する分野

【土木インフラ】
道路、橋、トンネル、ダムなど
社会基盤の新設・維持管理に関わる分野

【公共施設インフラ】
学校、図書館、役所など
教育や地域の管理に関わる分野

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インフラ業界で働く魅力

インフラ業界は、電気・ガス・交通・通信・水道など、私たちの暮らしに欠かせない「当たり前」を支えている業界です。そんなインフラ業界で働く魅力について、詳しく見ていきましょう。

社会貢献性が高く、人の役に立つ実感が得られる

インフラ業界は、人々の生活や命を守るという社会的使命感を持つ業界です。例えば、電気や水道を安定して供給することで安全な生活を支えたり、通信や交通インフラを整備することで地域の発展や災害時の復旧を支えたりなど、影響範囲が広いことが特徴です。

「社会に必要とされる仕事がしたい」「人の役に立つ実感を得たい」という気持ちを持つ方にとって、やりがいを感じやすい業界といえるでしょう。

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スケールの大きな仕事に挑戦できる

インフラ業界では、数年単位で進める大規模なプロジェクトに関わる機会があります。例えば、新幹線の路線建設やダムの整備、大都市の通信網の再構築など、国家レベルや地域社会レベルの大きなプロジェクトに関わることがあります

スケールの大きな仕事は、多くの関係者と連携しながら進める難しさもありますが、完成したときには大きな達成感を味わえるでしょう。

日常と直結しているため、目に見える成果を感じる

インフラ業界の仕事は、自分の役割が社会のなかでどう活きているかを日々実感しやすいことが特徴です。

例えば、担当した道路や鉄道が実際に使われている様子を目にしたり、通信障害の復旧対応で「ありがとう」と感謝の言葉をもらったりと、目に見える成果を感じる機会も多くあります。

こうした実感を得られることで、モチベーションの維持にもつながりやすいでしょう。

安定性の高い環境で働ける

電気・水道・通信などの社会インフラは、景気の変動や流行に左右されにくく、日々の暮らしや産業活動を支える基盤として、常に一定の需要があります

また、多くのインフラ事業は国や自治体と連携して進められる公共性の高い領域であり、法律による整備義務や、設備の更新や点検などが継続的に行われる点も特徴です。

こうした背景から、社会情勢が変化しても業務が途絶えるリスクは比較的低く、将来を見据えて安定したキャリアを築きたい人にとって魅力的な業界といえるでしょう。

インフラ業界の課題や将来性

インフラ業界が直面している課題や、将来に向けた変化の方向性についても整理しておきましょう。

老朽化するインフラ設備の維持・更新

日本国内には、高度経済成長期に整備されたインフラが数多くあり、なかには耐用年数を超えた設備もあります。

特に、高度成長期以降に整備された道路橋、トンネル、河川、下水道、港湾などの老朽化が進んでおり、安全に使い続けるためには更新や補修が必要です。限られた予算と人員で、どう効率的に管理していくかが業界全体の課題となっています。
※参考:国土交通省「社会資本の老朽化の現状と将来

担い手不足と技術継承の問題

インフラ業界では、現場の施工管理や保守点検などを担う技術職の高齢化が進んでおり、若手技術者の確保が課題です。特に、土木・電気・建設分野は専門性が高く、長期的な経験が必要なため、ノウハウの受け継ぎも大きな課題となっています。

一方で、新卒や若手技術者の育成に力を入れる企業も増えており、若い世代の活躍の場も広がりつつあります。

カーボンニュートラルと再生可能エネルギーへの転換

政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」などを受けて、インフラ業界でも再生可能エネルギーの導入や、二酸化炭素排出の削減に向けた取り組みが進んでいます。特に電力やガス業界では、太陽光・風力・水素といったクリーンエネルギーへの転換が求められており、従来の設備や供給体制の見直しが必要です。

第6次エネルギー基本計画(2021年)では、2030年度に電源構成の36〜38%を再生可能エネルギーでまかなう目標が示されており、インフラの運用・設計においても新たな技術への対応が課題となっています。

DX・スマートインフラの加速

インフラ業界では、AIやIoT、ビッグデータといったテクノロジーを活用し、効率的かつ高度なインフラ運用を実現するDXや「スマートインフラ」の導入が進んでいます。

DXとは

デジタル変革のこと。デジタル技術を活用して業務やビジネスモデルなどを変革する

AIとは

人工知能のこと。人間のように学習・判断・推論を行う技術

IoTとは

モノのインターネットのこと。「モノ」をインターネットに接続し、データ収集・交換・分析を行う技術

具体的には、スマートメーターによる電力使用量の自動管理や、センサーを活用した老朽設備の遠隔監視などにより、現場の管理方法や運用体制にも大きな変化がもたらされています。

こうした技術を現場に取り入れていくことが今後の課題です。文系出身者でも、基本的なITリテラシーを身につけることで活躍できるでしょう。

インフラ業界の職種と仕事内容

インフラ業界の職種別に、仕事内容ややりがいについて詳しく見ていきましょう。

施工管理・技術管理職(現場監督)

施工管理職は、インフラ整備の現場で工事の進行を管理する現場監督のような役割です。協力企業や職人と連携して、工期を守りつつ安全で正確な施工を実現します。

完成した道路や施設が地域で使われている様子を見ることや「社会に形を残す」仕事となる点にやりがいを感じられるでしょう。

営業職

営業職は、インフラ設備やサービスを顧客に提案・提供する役割です。対象は官公庁や企業、個人などさまざまで、提案内容や営業スタイルが異なるのが特徴です。

例えば、法人・官公庁向けの営業職は、水道、道路、電力、通信などの設備導入や工事を提案します。一方、個人向けの営業では、個人宅への電力・ガス・通信契約や住宅設備の導入支援などを行います。

IT開発・エンジニア職

インフラ業界のエンジニアは、スマートインフラや業務のDXを推進する職種です。IoT・AI・クラウドなどの技術を活用して、インフラの効率化や可視化、遠隔管理を実現します。

スマートメーターや設備モニタリング、異常検知システムの構築に関わることもあり、社会のインフラを見えないところから支える重要な仕事です。

事務系総合職

事務系の職種は、企業の運営に必要な人事・総務・経理・法務などの役割を担い、社員が安心して働ける環境を整える仕事です。具体的には採用や労務管理、経費精算、社内制度の整備、リスク管理などを行います。

公共性の高いインフラ企業では、コンプライアンスや災害対策への対応も重視されるため、正確な事務処理能力や調整力が必要です。インフラを支える企業運営に関わることにやりがいを感じられる仕事です。

企画・事業開発職

企画・事業開発職は、社会のニーズや技術革新をふまえ、インフラ分野で新しいサービスや仕組みをつくる職種です。例えば、エネルギーの地産地消、スマートシティ構想、災害に強い街づくりなどがテーマになることもあります。

具体的には、市場調査、新規事業の立案、社内調整、プロジェクト推進などを行います。社会課題の解決や未来のインフラをつくるという責任感と創造性を発揮できる仕事です。

研究・技術開発職

研究・技術開発職は、新しい技術や素材を用いたインフラの開発に取り組みます。例えば、省エネ技術の開発、再生可能エネルギーの高度化、新構造材の試験など、将来を見据えた取り組みを担います。

インフラの未来を形づくる社会的影響の大きな仕事であり、自分の技術が次の時代の基盤づくりにつながると実感できるのも魅力です。

インフラ業界が向いている人の特徴

次のような特徴を持つ人は、インフラ業界に向いている可能性があります。

社会に貢献したい気持ちが強い

インフラ業界は、日常の当たり前を支える存在として、誇りを持って働ける仕事です。直接的に誰かの役に立っている実感を得られることが多いため「社会や人の役に立ちたい」という気持ちを持つ人に向いています

また、地域や都市、時には国全体に関わるプロジェクトに携わることもあり、社会を動かすような仕事に関心がある方にもおすすめです。

地道な努力をコツコツ積み重ねられる

インフラ業界は、見えないところで社会を支える仕事であり、表舞台で注目されることは多くありません。それでも、継続的に正確な仕事をコツコツ積み重ねることが、社会全体の安全や快適さにつながります

結果が出るまでに時間がかかる分野で粘り強く取り組める人は、インフラ業界に向いているといえるでしょう。

チームで協力して物事を進めるのが得意

インフラの現場では、施工、設計、保守、営業、行政など、異なる立場や専門性を持つ人たちが連携して仕事を進めます。自分一人で完結するより、チームで協力して成果をあげたい人は、充実感を持って働きやすいでしょう。

インフラ業界への就職に向けてできること

インフラ業界への就職を目指す場合は、次の3つを意識して準備を進めましょう。

業界の全体像や職種、働き方の理解を深める

まず取り組みたいのが、インフラ業界全体の構造や分野ごとの特徴、現状や今後の動きについて理解を深めることです。「どんな企業があるのか」「それぞれの分野でどんな役割を担っているのか」を知ることで、自分に合う方向性を整理しやすくなります。

インフラ業界には、技術系・施工管理系の職種だけでなく、営業職・企画職・事務職など、さまざまな職種があります。新卒採用では総合職として入社し、配属後に職種が決まるケースもあるため、あらかじめ各職種の役割を理解しておきましょう。

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志望動機の軸を明確にしておく

業界研究と自己分析の結果をふまえて「なぜインフラ業界なのか」を明確にすることも大切です。「安定しているから」「社会に役立つから」といった理由だけでは、志望動機としてはやや抽象的です。

​​「なぜインフラ業界のなかでも電力分野なのか」「なぜ通信分野に興味を持ったのか」など、インフラ業界内で関心を持った分野の違いを整理しておくと、企業研究や志望企業の選定に役立つでしょう。

説明会やイベント、インターンに参加して実体験を積む

実際に業界の雰囲気を体感するために、企業イベントや説明会、インターンに参加するのもおすすめです。インフラ業界では、仕事体験・座談会・現場見学などを通じて、社員の考え方や業務内容に触れられる機会が設けられています

特にインターンでは、実際に企業の実務を体験することができます。「現場の仕事は体力的に大変そう」「自分に向いているか不安」と感じる人ほど、実際に業務を体験することで、仕事のイメージが具体的になります。

複数の企業インターンを経験すると、それぞれの企業の雰囲気や事業内容の違いを比較でき、自分に合う環境を見つけやすくなるでしょう。

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インターンシップとは職業体験を通じて、実力を確かめる・発揮する場所です。今あるスキルを確かめながら伸ばせる機会になるため、時間を確保できる方は積極的に参加しましょう。選考が実施されるインターンシップでは、書類作成や面接の練習も必要です。

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インフラ業界の志望動機例文

ここでは、インフラ業界の分野・職種別に、志望動機の例文を紹介します。

通信分野 × 総合職

例文

人々の生活を支える通信インフラの構築に携わりたく、貴社の総合職を志望いたします。

私が通信分野に関心を持ったのは、大学時代のゼミで地域のICT活用に関する研究を行ったことがきっかけです。とくに災害時の情報伝達の重要性について学び「見えないところで生活を支える仕組み」に興味を持つようになりました。

なかでも貴社は、地域密着型の通信インフラ整備や、災害時の復旧体制の強化に注力しており「いざというときに頼れる存在」として地域に信頼されている点に魅力を感じています。

入社後は、まず現場に近い仕事を通じて経験を積み、通信のしくみや課題を深く理解したいと考えています。将来的には、地域の状況やニーズをふまえながら、信頼される通信サービスを支える立場で活躍できる存在を目指します。

ポイント

  • 自分の体験からインフラ業界への関心につなげており納得感がある
  • 企業の取り組みに言及していることで、その企業を選んだ根拠が示されている
  • 入社後にどう活躍したいかが具体的に描けている

電力分野 × 技術職

例文

人々の暮らしや産業を支える電力インフラの安定供給に携わりたく、貴社の技術職を志望いたします。

私は大学で電気電子工学を学び、電力系統や再生可能エネルギーの制御技術について研究してきました。実験やフィールドワークを通じて、電力の安定供給を実現するための仕組みの奥深さと、正確かつ安全な運用の重要性を実感しました。なかでも貴社は、老朽設備の更新や災害対策に積極的に取り組むだけでなく、次世代の電力ネットワーク構築にも力を入れており「将来を見据えて社会の土台を支えている」姿勢に魅力を感じています。

入社後は、送配電設備の保守や設計といった現場に携わり、まずはインフラの安定運用に必要な知識と技術を習得したいと考えています。将来的には、設備更新やエネルギーの地産地消といった地域課題にも対応できるよう、広い視野を持って技術を磨いていきたいです。

ポイント

  • 大学での技術的な学びを通じて、社会を支える仕事に興味を持った流れがわかる
  • 社会インフラの課題と向き合う企業の姿勢に共感して志望していることが伝わる
  • 現場志向と成長意欲が伝わるキャリアビジョンが示されている
人事

インフラ業界の志望動機の作り方や例文については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

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よくある質問

インフラ業界とは何ですか?

インフラ業界とは、私たちの生活や社会活動を支える基盤となる設備やサービスを提供する業界です。電力・ガス・水道・通信・交通などが含まれ、生活や経済活動を安定的に支える重要な役割を担っています。

インフラ業界は文系にも向いていますか?

インフラ業界は、文系・理系どちらも活躍できます。例えば、営業職や企画職、総務、人事、広報など、文系学生が活躍できる職種も多くあります。

生活インフラとは何ですか?

生活インフラとは、人々の暮らしに直接関わる基盤設備を指します。おもに電気・ガス・水道・通信・交通などがあり、これらが安定して機能することで、安全で快適な生活が維持されています。

インフラ業界の平均年収はいくらですか?

国税庁の令和5年分民間給与実態統計調査によると、電気・ガス・熱供給・水道業の年収は775万円、情報通信業は649万円となっています。実際の年収は勤務地や職種などによって異なります。

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