内定

内定取り消しは違法?認められる条件や対処法、相談先を解説

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内定は正式な労働契約であるため、企業側の都合で簡単に取り消せるものではありません。ただし、合理的な理由がある場合など、一定の条件を満たせば、取り消しが認められることもあります。

内定を受けた企業から取り消しを告げられた場合は、理由を書面で確認し、学校のキャリア支援センターや労働局などに相談するなど、適切に対応を行いましょう。

この記事では、内定取り消しが認められる条件や違法となるケース、取り消しを告げられたときの対処法などをわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 内定取り消しが認められる条件には「学生側の事由」と「企業側の事由」がある→条件はこちら
  • 合理的な理由がない場合は、内定取り消しは認められない→違法になるケースはこちら
  • 内定取り消しを告げられたときは5つのステップで対処する→対処ステップはこちら

監修者からのコメント

監修者
遠藤 美穂子さん

「内定をもらっても、取り消されることがあるの?」と気になる人もいるでしょう。内定が取り消されるのはよほどの事情がある時に限りますが、取り消しになるケースや、取り消しと言われた時にどう対応すればよいか知っておくと安心です。これから就活を始める人も、就活を終えた人も、ぜひご覧ください。

内定取り消しとは?

内定取り消しとは、企業が一度出した内定を無効とすることです。法的には「始期付解約権留保付労働契約」の解約にあたり、解雇に準じて扱われます。

まずは内定がどんな法的性質を持つのかを理解しておきましょう。

内定は労働契約の成立にあたる

企業から内定通知を受け取り、学生がそれを承諾した時点で、企業と学生の間で法律上の労働契約が成立したと考えられています。この労働契約は「始期付解約権留保付労働契約」とよばれるものです。

「始期付」「解約権留保付」はそれぞれ次のような意味を持ちます。

用語意味
始期付実際に働き始めるのは入社日から
解約権留保付一定の条件を満たした場合、
契約を解約できる権利を双方が持つ

内定取り消しは「解雇」に準じた扱いになる

労働契約が成立している以上、企業が一方的に内定を取り消すことは、法律上「解雇」に準じた扱いになります。企業が内定を取り消すためには、客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性の両方が必要です。

つまり、正当な理由のない内定取り消しは、違法と判断される可能性があります。

内定取り消しは「客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できる場合のみに限られる」とされており、これに該当しない場合は労働契約法第16条により無効とされます。

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法第16条

企業から内定取り消しを告げられた場合、必ずしも「企業が決めたことだから仕方ない」とあきらめる必要はありません。取り消しの理由によっては、撤回を求めたり、損害賠償を請求したりできる場合があります。

内定と内々定との違いは法的拘束力があるかどうか

内定と混同しやすい言葉に「内々定」があります。両者の違いを理解しておくことも重要です。

内々定とは、正式な内定を出す前段階として企業が示す「採用する意向」のことです。10月の内定解禁前に、口頭で内定を伝えることがあります。

内々定は、原則として法的な労働契約の成立とは見なされません。ただし、連合の労働相談Q&Aでは「内々定についても、それが行われた状況によっては内定と同様に扱われる」とされています。

内定内々定_アイキャッチ
内定と内々定の違いは?取り消しの可能性、辞退方法を解説【就活】

内定は書類で労働契約を交わした状態であり、内々定は採用を予定している状態のことです。企業は、内々定を通知した学生に対しても一方的な取り消しを行ってはいけないため、内々定が出た時点で基本的には内定を受けることができます。

内定取り消しが認められる条件

内定取り消しが認められる条件には「学生側の事由」と「企業側の事由」の2つがあります。それぞれどんな条件があるか、詳しく見ていきましょう。

内定取り消しが認められる条件

内定取り消しが認められる条件【学生側の事由】

学生側の事由としては、次のようなものがあります。

学校を卒業できなかった

新卒で内定を得たものの、単位不足などにより学校を卒業できないケースです。

企業は学生が学校を卒業することを前提に内定を出しているため、卒業できないことが確定した時点で、取り消しが認められる可能性があります。

一方で、企業によっては、翌年の入社に切り替えるかたちで対応してもらえることもあります。企業の採用担当者へ事情を伝え、今後について相談してみましょう。

就労までに必要とされる免許・資格が取得できなかった

採用条件として、特定の免許や資格の取得が定められている場合、入社日までに取得できなかったときは、内定取り消しが認められる可能性があります

内定承諾前に採用条件をあらためて確認し、必要な資格の取得期限には余裕を持って準備しておくことが重要です。

経歴・学歴など虚偽があった

履歴書や誓約書などに重大な虚偽の記載があった場合、内定取り消しが認められる可能性があります。例えば、学歴・資格・職歴を実際とは異なる内容で記載していた場合などが当てはまります。

内定後の犯罪・素行不良が発覚した

内定後に犯罪行為を行った場合や、素行不良が明らかになった場合も、取り消し事由となる可能性があります。SNSへの不適切な投稿が原因となることもあるでしょう。

迷惑行為や未成年飲酒、他者への誹謗中傷、内定者研修の様子を無断で撮影・公開するといった行為も対象となります。非公開の鍵アカウントであっても、特定される可能性はあります。内定後もSNSの取り扱いには注意しましょう。

人事

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就労が困難な病気・けがをした

内定後に重篤な病気やけがをして、入社日から就労することが困難と判断されるケースです。業務に重大な支障をきたすと判断される場合には、内定取り消しが認められる可能性があります

病気やけがを理由に取り消しを告げられた場合は、医師の診断書を用意したうえで、企業と話し合うことが大切です。

内定取り消しが認められる条件【企業側の事由】

企業の業績悪化を理由とした内定取り消しも可能ですが「整理解雇の4要件」に則って行う必要があります。単に先行きが不安定であることを理由に、内定を取り消すことはできません。

内定取り消しが認められる条件【企業側の事由】
  1. 人員削減の必要性
  2. 解雇回避努力
  3. 被解雇者選定の合理性
  4. 説明・協議などの手続き

これら4つの要件を総合的に満たさない場合、業績悪化を理由とした内定取り消しは違法と判断される可能性があります。

監修

内定取り消しには、学生側の事由と企業側の事由があります。あいまいな事情ではなく、内定の条件や企業の整理解雇の4要件などに照らして判断されます。卒業に1単位足りなかったというようなことのないよう、学業にしっかり励んでおきましょう。

内定取り消しが違法になるケース

次のようなケースは、内定取り消しが違法と判断される可能性があります。

内定取り消しが違法になるケース
  • 合理的な理由がない
  • 整理解雇の4要件を満たさない経営悪化を理由とした取り消し
  • 内定前から企業が知っていた事情を理由とした取り消し

客観的に合理的な理由を欠く取り消しは、労働契約法第16条により無効となる可能性があります。例えば「なんとなく社風に合わない」「雰囲気が暗い」のような、主観的な判断にもとづく内定取り消しは、認められません

企業側が業績悪化を理由に内定を取り消す場合は、整理解雇の4要件をすべて満たす必要があります。「業績が少し落ちた」「先行きが不安」といった理由だけで内定を取り消すことはできません。

また、選考段階ですでに企業が把握していた事実を、内定後になって取り消し理由とすることも認められません。例えば、学生の健康状態について企業が把握していたにもかかわらず、内定後にその事実を理由として取り消すことなどが該当します。

違法な取り消しだと判断したときにできること

内定取り消しが違法にあたると考えられる場合は、内定の効力の回復や損害賠償を求めることが可能です。

手段内容
内定取り消しの
無効確認
取り消しが無効であることを主張し、
内定の効力の回復を求める
損害賠償請求内定取り消しによって生じた損害
(就活にかかった費用や精神的苦痛など)
の賠償を求める

裁判所に申し立て、内定者としての地位を法的に確認することも可能です。このような手続きを通じて、内定の効力の回復を求めることもできます。これらの手段はいずれも企業と争う形になるため、まずは学校のキャリア支援センターや労働局などの相談機関に状況を整理してから相談してみましょう。

内定取り消しを告げられたときの対処ステップ

内定取り消しを告げられたときの対処方法を、5つのステップで紹介します。

  1. 取り消しの理由を書面で確認する
  2. 必要書類を揃える
  3. 学校のキャリア支援センターに相談する
  4. 都道府県労働局・総合労働相談コーナーに相談する
  5. 弁護士へ相談する(撤回交渉・損害賠償)

1. 取り消しの理由を書面で確認する

まずは、取り消しの理由を企業に確認してみましょう。口頭での説明だけでは証拠が残らないため、書面での回答を求めることが大切です。取り消しの理由を確認したうえで、正当な理由かどうかをあらためて判断します。

2. 必要書類を揃える

内定取り消しに関して動き出す前に、手元にある書類を確認し、必要なものを揃えておきましょう。

連合の労働相談Q&Aでも、採用内定があったことの証拠(入社日の通知、必要書類提出の案内、研修の案内など)を保存することが対処の第一歩として挙げられています。

必要書類の例

  • 内定通知書・内定承諾書
  • 入社日の通知
  • 必要書類の提出案内
  • 研修の案内メール
  • 企業とのやり取りのメール・チャット履歴

これらの書類は、内定取り消しの無効確認や損害賠償を求める際に必要となるため、内定を取り消された後も処分せず、手元に保管しておきましょう。

3. 学校のキャリア支援センターに相談する

取り消しの理由に納得がいかない場合に相談しやすいのが、学校のキャリア支援センターです。キャリア支援センターのスタッフはさまざまな学生のトラブルに対応してきているため、内定取り消しのようなイレギュラーな事態にも対応できる可能性があります。

学校が企業に対して直接働きかけることで、内定取り消しの見直しが行われたり、就活の再開を支援してもらえたりする場合もあります

一人で抱え込まず、まずはキャリア支援センターに状況を話してみることが大切です。

4. 都道府県労働局・総合労働相談コーナーに相談する

学校のキャリア支援センターでの対応が難しい場合や、より公的な機関に相談したい場合は、都道府県労働局や総合労働相談コーナーへの相談が有効です。

総合労働相談コーナーは、労働に関するトラブルの相談を受け付けている公的な窓口です。専門の相談員が面談や電話で対応し、企業側の行為に違法性が疑われる場合には、行政指導の権限を持つ担当部署に取り次ぐ役割も担っています。

総合労働相談コーナーは全国に設置されており、電話での相談も受け付けています。学生も利用可能です。

都道府県労働局

厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」

5. 弁護士へ相談する(無効確認・損害賠償)

取り消しの見直しを強く求めたい場合や、損害賠償を検討している場合は、労働問題に強い弁護士への相談を検討してみましょう。弁護士に依頼することで、取り消しが違法であることを主張し、内定の効力の回復を求めることが可能です。

裁判所に申し立て、内定者としての地位を法的に確認することも可能です。また、賃金の仮払いを請求し、裁判期間中の生活費の一部を受け取れる場合や、精神的苦痛などの損害賠償を求められる場合もあります。

弁護士への相談には費用がかかりますが、個人で対応するよりも、結果につながる可能性があります。また、法テラス(日本司法支援センター)では、収入や資産が一定基準以下などの条件を満たした方は「無料法律相談・費用の立替制度」を利用可能です。

ただし、企業と法的に争って内定を取り戻したとしても、入社後の関係悪化や働きづらさが生じるリスクもあります取り消しの見直しを求めるか、損害賠償を求めて別の就職先を探すかは、状況を整理したうえで判断することが大切です。

法テラス

内定取り消し後の就活の進め方

ここでは、内定取り消し後に気持ちを整理し、次のステップに向けて動き出すための心構えと、就活の進め方を紹介します。

就活を再スタートするタイミングと心構え

年度末ぎりぎりまで採用を続けている企業もあります。できるだけ早く就活を再開することが、就職先の選択肢を広げることにつながるでしょう。

就活の再スタートにあたって、意識しておきたいことは次の5つです。

意識しておきたいこと

  • 原因が自分にある場合は振り返りを行う(SNS投稿・卒業できないなど)
  • 志望業界や企業の方向性をあらためて整理する
  • 取り消しの経緯を面接で聞かれる可能性を踏まえ、回答を準備する
  • 企業都合の場合は、後ろめたく感じる必要はない

気持ちの整理と並行して、まずは求人情報を集めることから始めてみましょう。

就職留年と就職浪人を選ぶことも可能

「就職留年」と「就職浪人」という選択肢もあります。

就職留年卒業せずに在学期間を延長し、
学校に籍を置いたまま就活を続ける方法
就職浪人卒業後、就活を続ける方法

就職留年は在学期間を延長するため、その分の学費がかかります。

就職浪人は、卒業したからといってすぐに既卒扱いになるとは限りません。就業経験がない場合や、卒業後3年以内であれば新卒枠で応募可能な企業も多いです。ただし、企業によって判断基準が異なるため、応募前に各社の募集要項を確認しておくことが大切です。

どちらを選ぶ場合でも、面接では留年・浪人の理由とその期間をどのように過ごしたかを聞かれることがあります。資格取得や長期インターンシップなど、就活につながる活動をしておくことで、アピールポイントを増やせるでしょう。

内定取り消しを防ぐために内定後に気をつけること

内定後は、ちょっとした行動や対応が内定取り消しにつながる場合もあります。気をつけたいポイントは次の3つです。

SNSの情報発信に注意する

企業の採用担当者がSNSをチェックしている場合があり、不適切な投稿が発覚すると、内定取り消しの理由になる可能性があります。

特に気をつけたい投稿

  • 未成年飲酒など、法令や社会規範に反する行為の投稿
  • 内定先企業の情報や内定者研修の様子を無断で公開する投稿
  • 他者への誹謗中傷や差別的な発言
  • 採用担当者や面接官への悪口

裏アカウントでも、プロフィールや公開されている投稿から本人が特定される可能性があります。内定後は過去の投稿も見直し、不適切なものは削除しておくことをおすすめします。

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単位・卒業要件を確認する

新卒の場合、単位不足により卒業できない事態にならないよう注意が必要です。内定を獲得した安心感から学業がおろそかになりがちですが、卒業できなければ内定が取り消される可能性があります。

内定獲得後に確認しておきたいこと

  • 卒業に必要な単位数と、現時点での取得単位数
  • 残りの学期で履修すべき科目
  • 卒業論文・卒業研究の提出期限とスケジュール
  • ゼミや必修科目の出席状況

万が一、単位の取得が難しい状況になった場合は、早めに学校へ相談しましょう。

企業からの連絡・手続きを怠らない

内定後は企業からさまざまな連絡や手続きの依頼が届きます。これらを放置したり、期限を守らなかったりすると、内定取り消しの理由になる可能性があります。

対応が必要な手続きの例

  • 内定承諾書の提出
  • 健康診断書の提出
  • 入社に必要な書類(住民票、卒業見込み証明書など)の提出
  • 内定者研修・懇親会への参加連絡
  • 企業からのメール・電話への返信

連絡が来たら、できるだけ早めに返信・対応することを心がけましょう。やむを得ない事情で期限に間に合わない場合は、放置せず事前に企業へ連絡することが大切です。

よくある質問

内定取り消しになる理由は何ですか?

内定取り消しの理由は、学生側と企業側の2つに分けられます。学生側のおもな理由としては、学校を卒業できなかったことや経歴の虚偽、SNSへの不適切な投稿、犯罪や素行不良の発覚などが挙げられます。企業側の理由としては、整理解雇の4要件を満たすほどの深刻な経営難などが該当します。

内定取り消しが認められる条件」で詳しく解説しています。

実際に内定取り消しがあった事例を教えてください。

過去には、2020年はコロナ禍による業績悪化で多くの内定取り消しが発生しました。また、SNSへの不適切な投稿や、内定式後の不適切な発言が原因となったケースも報告されています。

内定取り消しを受け、損害賠償を請求できますか?

不当な内定取り消しと判断された場合、損害賠償を請求できる可能性があります。就活にかかった費用や精神的苦痛などが対象となります。

内定を取り消すことは違法ですか?

正当な理由のない内定取り消しは、労働契約法第16条により違法となる可能性があります。内定は労働契約の成立にあたるため、取り消しは解雇に準じて扱われるためです。ただし、学校を卒業できなかった場合や経歴詐称が発覚した場合など、合理的な理由がある場合は認められます。

監修者情報

監修者

監修者:遠藤 美穂子さん

新卒で東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行、営業店・本部にて法人営業に携わるほか、新人研修講師、採用面接官も経験。
現在はキャリアコンサルタントとして大学での就活支援、キャリア系講義、社会人向けのビジネスマナーやキャリア開発研修などを行っている。

資格:国家資格キャリアコンサルタント/2級キャリアコンサルティング技能士

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